ゴーゴーサラマンダー
本当はホソバオキナゴケのことを書きたかった
「さて、今日はホソバオキナゴケのことについて書くか」
「ホソバオキナゴケはイモリウムの定番種として扱われているが、案外管理が難しいからな」
「ケージの通気や用土、細かな条件によって調子が目に見えて変わるもんだ」
「幸い、うちにはホソバオキナゴケベースのイモリウムが2つあるし、それぞれを比較してみよう」
「まずは、こっちのケージのホソバオキナゴケをパシャリと」
......
「おっと生体が映り込んじゃった、改めてパシャリと」
......
「うーん、お前を撮りたいわけじゃないのよね」
......
「どけよ!あと増えんな!」
みんなで知ろう、ファイアサラマンダーの魅力!
こうなってはもう開き直るほかない。
ホソバオキナゴケのことはいつか書く、必ずだ。
①つぶらなひとみ
我が家の来客を標本とした独自統計だが
カエル・トカゲ系の生きものが苦手な方々は、特にそのギョロッとした目が怖いとおっしゃることが少なくない。
そしてサラマンダーはというと、どの角度から見ようとも、つるんとした黒目のみが佇んでいる。
そのためか「この子は目がかわいいね!」とのご感想をたびたびいただく。
他種の(特に水棲種の)、決してヒトとは世界観が交わることのなさそうな、およそ哺乳類には再現し得ないような、無機質な瞳も好きだが
まんまるおめめという記号的愛らしさを、ここまでうまく乗りこなすというのはイモリ界きっての魅力であるといえよう。
②育てる楽しさ
こちら5年前のお迎え当初の写真。
せっかくカッターマットの上で撮影しているんだから、正確な大きさを測っておけばよかったと後悔。
目測と記憶に過ぎないが、大きく見積もっても頭からしっぽの先まで10センチはなかっただろうといったところ。
そしてこちらが先ほど撮った写真。
でっか......
もちろん、ほかの種も成熟するに連れ大きくなるのは確かだが
一般に市場に出回る成長段階(=我々素人でもある程度安定して育てられる段階)から
数年そこらで、そっくりそのまま倍の大きさになって且つ、そもそも成体がでかいという条件を満たすのは
サラマンダーをおいて他にいないといって差し支えないだろう。
③パワーがある
床材を掘る、餌をぶんどる、お友達に噛みつく、植物を踏み荒らす、床材を掘る、床材を掘る。
とにかく規格外のパワーを誇る。
これが大変魅力的であり、とくに給餌の際などピンセット越しに伝わる彼らの力は、ほかではなかなか味わえない。
「あぁ、生きもの飼ってんだなぁ」的な、むこうからの物理的働きかけによるフィードバックは、正直ファイアサラマンダーの世話でしか感じていない。
上述の「育てる楽しさ」も併せて考えると、カブトムシの飼育なんかと近い感情が呼び起こされる。
でも床材は掘らないで。
④なつく
些かグレーな表現ではあるが、そういって差し支えがない程度には関係を築くことができる(と思っている)。
我々が入手する海外のイモリは、基本的にブリーダーの手によって繁殖・飼育がされた個体であり
したがって、人間によくなれていることが多い。
そんな中でもファイアサラマンダーよく餌付き、極端にこちらを避けるよう行動を生じない特徴が強い。
冒頭の写真も、それを如実に物語っている。
陸での飼育が基本になること(水棲種のほうが飼育しやすいという話は前回の記事で)や、温度管理の面など
決して初心者におすすめできるわけではないが、ささやかなれど他種に比して情緒的交流が芽生えやすいという意味では
とっつきにくいばかりの種でもないのかもしれない。
もし、この記事を読んでファイアサラマンダーに興味を抱いてくださった方がいらしたら、それはたいへんイモリスト冥利につきる。
僭越ながら先輩イモリストとして一つ注意点を申し上げるとすれば、暑さにはあまり強くないので、お迎えは秋ごろまで待った方がベターである。
以上、ゆけゆけすすめ!でも床材掘るな!”ゴーゴーサラマンダー”。